学生と政治のつながりについて考えたこと。

昨日、安倍内閣が集団的自衛権の行使容認を閣議決定した。このことは、私の周りの多くの学生にも少なからぬインパクトというか、ショックを与えた出来事だったようだ。日頃は楽しいやりとりが繰り広げられているTwitterのタイムラインに、集団的自衛権に関する話題が多く登場し、私もそこに参加して色々と意見交換を行った。

その中で学生が今回のことから疑問に思っていること、感じていることは大きく3つにまとめられるようだ。

1.集団的自衛権はどうして今認められたのか
2.政治への関与の方法は選挙以外にないのか
3.日常的にどうやったら政治についての情報を得られるか

1は様々に意見があると思うので、敢えてここに書くことはしない。
2について簡単に書くと、選挙は意思表示をする方法のひとつでしかない。民主主義の実践は、選挙までの時間をどう過ごすのかという点にあると思う。つまり、投票は結論で、結論を出すためには議論が必要であり、その議論の過程は今を含めた選挙の間の時間、つまり日常である。

では、日常をどう過ごすのかということになるが、それは3とも関連するが、つまりは自分の意見を周りと交換することにあるだろう。そして、自分の意見とは違う意見や、同じ意見に触れ、自分を相対化したり、自分の意見を批判的に捉えたり、或いは、連帯を感じたり、そういうことをすることが民主主義に参加するということではないだろうか。
勿論、今回のことに反対するならば、デモに参加するという方法も、署名をするという方法もあるだろう。
しかし、何れにしても、それらの判断のためにも、3が大事になってくる。

3の方法、つまり、どうやって知るのか、ということについて。
実は前回の記事にも書いたこととも大いに関連している。
考えるべきは、多くの学生がなぜ政治について判断するための情報を持っていないのか、ここである。
現在、ほとんどの学生は新聞を読んでいない。また、自分の興味関心の範囲が狭くなっている。これは学生の意識の問題に還元してしまえば簡単だが、実際はそんなに簡単な問題ではない。そうではなく、環境の問題である。
では、多くの学生がどのように情報を収集しているのだろうか。インターネットであり、スマートフォンである。これらでアクセスする先はどのようなものかといえば、TwitterやLINEが殆どであり、かろうじてヘッドラインで流れてくるヤフーニュースくらいであろう。「進んでいる」学生は、もしかしたらGoogle Nowくらいは使っているかもしれないが、これもカスタマイズを前提としている。
つまり、自分のつながっているネットワークの外側の情報が、全く入らない環境になっているのである。だから、集団的自衛権がどういうものなのか、何が問題だと言われているのか、殆ど知る術がないのである。

Googleという会社がどうやってビジネスを成り立たせているのかといえば、情報を整理することで、雑多に散らばっているネット上の情報を価値のある情報にすることによってである。典型的なものは、検索ワードに応じて表示される広告だ。しかし、こうした情報収集はより広く、深くなっている。Gmailを私も使っているが、メールの文面の情報や人的つながり、見たウェブサイト、そうしたすべての情報に基づいて情報が整理表示される。これが、インターネットはカスタマイズの世界だと呼ばれる意味である。
これを上手く使えば非常に有効に情報を集めることが可能になる。だが、逆にこれらの世界に埋もれてしまえば、自分の現在の関心やつながりから外にでる力を奪うことになる。それが、昨日の学生たちの焦りと驚きにつながっているのではないだろうか。

さて、これをここまで読んでくれた人に、では具体的にどうしたら良いのかということについて少しだけオススメをしたい。
私が今回の件について色々と参考になったのは、ラジオだった。ひとつは、TBSラジオの荻上チキSession-22という番組であり、もうひとつは、Tokyo FMのピーター・バラカンLifestyle Museumの佐藤優氏との対談だった。私が住んでいる福岡ではこれらは直接聴くことが出来ないが、Radikoプレミアムのサービスを使えばリアルタイムで、ポッドキャストのサービスを使えば翌日に無料で聴くことが出来る。
この他、ウェブニュースサイトのハフィントンポストは比較的ユニークな観点から情報を整理していた。
これらは何れもマスメディアであり、それ故、こちらの文脈の外側から情報を持ってきてくれる良さがある。

ただし忘れてはならないのは、これらから得た情報が正しいとは限らないということだ。それを判定するためには、周りの人間と意見交換をすることである。聞いてきた情報について、根拠を持って説明できるか、相手が納得するかは、自分の理解した内容の正しさを判断する一番手っ取り早いリトマス試験紙になるだろう。
そうなると、勿論上記のようなことも大事だけれども、一番大事なことは、自分の暫定的な意見を人に表明し、議論をすること、それかもしれない。そうやって民主主義は守られていくはずだ。

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