AOKIの再生術

王子製紙による北越製紙へのTOBは難航しているが、AOKIによるフタタへのTOBは、場合によってはうまくいくかも知れないような兆候が見られている。
本日の日経新聞朝刊の記事「フタタへの経営統合案、不採算店、業態転換へ」(NIKKEI NET:企業 ニュース)によると、AOKIは不採算店舗に関しては、喫茶店、結婚式場など同社が運営している他の業態への業態転換を行う用意があることを示している。
つまり、フタタが現状で抱えている問題(不採算店舗)に対する解決策をAOKIが有しており、さらに現行の店舗の収益性についても、スケールメリットを利用した調達コストの節減が見込めるという点で解決策を示している。
つまり、フタタ経営陣がAOKIのTOB提案に対して前向きに検討しようとしている動きがあるのは、フタタの抱えている問題に対する解決策を提供する能力をAOKIが有しているからであり、一方的にAOKIにメリットがあるだけではないことが明らかだからではないだろうか。トリイやゼビオを買収したAOKIが同様の再生術を用いていたとも考えられ、同業他社の買収に対する1つの有効な方法を示していると考えられるだろう。
ところで、北越製紙のウェブサイトに掲載された王子製紙の提案に対する反論をまとめた資料「北越製紙の自主経営と株主価値向上について-王子製紙による経営統合案についての所見-」(PDF資料:http://www.hokuetsu-paper.co.jp/pdf/OSIRASE/060809_press_release01.pdf)を見ると、北越製紙は王子製紙の経営統合への反論として7つもの問題点を指摘している。これを(ざっとだが)見てみると、王子製紙の事業構造についての問題点を除けば、北越製紙の主張点はこのようなところだろうか。
すなわち、「王子製紙が中核向上である新潟工場を手に入れたいがために買収を仕掛けてきている。まずそのスタンスは、我々の事業展開のやり方と異なる覇権主義で、受け入れがたい。それ以外の事業に関しても事業統合上メリットがあるとは言えない。」という内容に見られる。

AOKIとフタタとの比較を考えてみると、フタタは事業上の問題点に対して(コナカはあまり有効な提案をしてくれなかったのに)AOKIは買収というやり方ではあるものの、有効な解決策を示してきてくれている、と捉えているようにみるのに対し、北越製紙側は別に困っていることはないのに、いきなり向上欲しさに買収を仕掛けられた、と映っているように見える。同じ時期のTOB発表であったが、決定的な違いがあることが見て取れる。

とかくTOBについては、感情的な側面が着目されがちな日本のメディア報道であるが、AOKIのフタタへのTOBの提案内容は理に適った提案であることをもっと評価しても良いはずだ。
特に今回のAOKIの買収提案は、買収対象企業の事業運営上の問題点に対する解決策を明確に示している点で、今後のTOBの是非を見る上でも興味深い内容となっている。これからも注目し続けたい内容である。

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