イントラプルナーとブルーノ・ラトゥール

Biotopeの小林さんの記事。

イントラプレナーの伴走者である「カタリスト型人材」が組織でのイノベーションを加速させる

小林さんは、イントラプルナー(企業内起業家)をどのように育み、組織を変革していくか、ということについて取り組まれています。つまり、イノベーションの種が、社内の淘汰環境の中で除草されてしまわないで育つにはどうしたらいいのか、ということです。
この記事で取り上げられているのは、尖ったイノベーティブなアイデアを持つ人間をどうやって組織の中でイントラプルナーとして育てていくのか、という点です。主に大企業などにおける宝の持ち腐れをどうやって解消していくのか。これは本当に私は大事だと思っています。



というのは、そうした尖った才能はだいたい組織の中では浮いてしまったり、彼/彼女の語ることは「異言」として、なんだかよくわからないと聞き流されてしまったり、干されたりするからです。そして、そうした人は組織の中でその能力が発揮されず、場合によっては、精神的に病んでしまったりするのではないでしょうか。
私の視点から言うならば、組織の中で異言を語る尖った才能と、官僚機構との異なるナラティヴをどのように結びつける接点を作っていくのか、という話になります。そして、尖った才能は必ずしもそういうことに長けていません。
科学人類学者のブルーノ・ラトゥールは『科学が作られているとき』で、内側を進める(研究を進める)ためには外側を進まなければならない(研究室の外でスポンサーを集めるために、自分の研究を翻訳し続けるレトリックを磨かなければならない)と述べましたが、これは組織内のイノベーションプロセスでも同じことが言えるるはずです。つまり、翻訳されなければアイデアはその組織において機能しないのです。
別な言い方をすれば、翻訳する(相手の文脈で自分のテクスト(アイデア)を語り直す)ことは、イノベーション・プロセスにおいて根本的な重要性があるわけです。
実際、偉大な起業家には、かならず翻訳者がいます。
有名なところで言うならば、本田宗一郎には藤沢武夫がいました。スティーヴ・ジョブズとスティーヴ・ウォズニアックも、どちらかというとジョブズが翻訳者かもしれません。
また、単に人が翻訳者として媒介するだけでなく、技術が媒介することもあります。会計技術の進歩がなければ事業部制組織が生まれなかったように。
そのように考えると、このカタリスト=媒介者(私はメディエーターと呼びますが)、もっと広くは媒介に着目することがイノベーション・プロセスを見る上で重要な視点ではないかと思うのです。
そんな自分の考えと非常にシンクロする記事でした。

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