シナジーの中身

よく多角化やM&Aなどで「シナジー」なる言葉が使われるが、これほど曖昧な言葉もないかもしれない。
実際、シナジーという言葉は、効果が明確化されていない場合に使われることが多い。
しかし、この事例はシナジーを表す事例としては適切かもしれない。10月23日付日経産業新聞記事によると、松下電器がテクニクスの技術者の能力を活かして、デジタル家電の音質向上を行っているそうだ。
同記事によると、デジタル家電のブルーレイディスクレコーダーでは、圧縮音源の補完という技術が使われており、これは音声データを圧縮したものを再度復元する際に、高音域が欠落してしまったものを補う機能だとのこと。こうした技術を開発するためには、音を聞き分ける耳が必要であり、こうした技術者の育成を行ってきたのが、テクニクスであるという。旧来は、テクニクスは主にクラシック音楽の再生のためのオーディオの開発を行ってきたが、デジタル家電の主な再生ソースである映画の音響などにもこうしたなかで培われた技術者の能力を活用しているとのこと。
この記事ではシナジーとは一言も書かれていないが、これは会社内でのリソースのシナジー効果だと言える。興味深い点は、テクニクスで培われた独自能力をデジタル家電という領域でさらに活用するという点で、この結果、また新たな音響の独自能力が松下に蓄積される可能性がある。それが次のデジタル家電のどのような領域に活用されていくのかは、真にシナジーを発揮させる上でのポイントになるだろう。シナジーといった場合には、もしかすると、組織の独自能力の多重的活用だけでなく、それによって、新たな領域での旧来の能力の進化という両方の側面が伴う必要があるのかもしれない。

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