東京スター銀行ATMを巡る騒動

しばらく更新を滞ってしまったが、またもや銀行ATMの話を少々。
東京スター銀行が、サンクスなどのコンビニエンスストアに他の銀行キャッシュカードでも無料でお金を引き出すことの出来るATMの設置を始めたところ、三菱東京UFJ銀行(この顧客をバカにした名前はなんとかならないのか)等がATM契約解除を発表するなど波紋を呼んでいる。
FujiSankei Business i. 金融・証券/東京スター銀、無料ATMに逆風 
“ただ乗り論”で大手行反発強める(2006/9/2)

この問題については、アサヒコムの↓の記事が参考になる。
東京スター銀の無料ATMに包囲網 他行、契約解除へ
この記事によると、通常自分が利用している銀行(仮にA行とする)以外のATM(仮にB行とする)を利用する場合、利用者とA行は、B行に手数料を支払う。これによって、利用者はB行のATMを利用することができる。
しかし、東京スター銀行の場合は、利用者の支払う手数料は無料として、A行のみに支払わせるという仕組みになっている。
そのため、三菱東京UFJ銀行のような銀行は、東京スター銀行のATMが増えて利用が増加すれば、東京スター銀行への手数料支払いが膨大な量になってしまうことを懸念し、今回の打ち切りの発表になったわけである。

まだ詳しい事情が分からないため軽率な判断は避けたいところだが、果たして東京スター銀行は、各行が批判するほど悪い銀行なのだろうか?
そもそも、顧客がATM利用手数料を支払いたくないことは当たり前であり、そうしたサービスを提供するための仕組みを銀行は提供するべきではないだろうか。だとするならば、まさにその仕組みを提供した東京スター銀行は、顧客の立場から擦れば正しいサービスを提供していると考えられる。
しかしこれに対する判断を難しくさせている要因はいくつかある。
まず、各行はATMの手数料収入が少なからぬ収入源になっているであろうこととが1つの要因であろう。
しかし、それ以上に考えられるのは、自行運営ATMとの競合が考えられる。自行ATMのオペレーティングコストがばかにならないにも関わらず、それを撤去するわけにもいかない現状がある。銀行はオペレーションの効率化を図るために現在支店の削減を行いながら、旧来支店があった場所にはATMを置いて対応している。だが、これらのATMにはそれぞれ少なからぬコストがかかっており、頻度の高い利用が求められる。東京スター銀行のATMが出来てしまうと、利用頻度が減少し、必然的に利用1単位当たりのコストが上昇することになる。
東京スター銀行ATMと同様に、自行ATMとの競合が考えられるセブン銀行との違いは、セブン銀行では手数料を取る、取らないは、各行のサービスに委ねられている。そのため、各行はATM設置戦略との関連をにらみながら、手数料設定をすることができる。しかし、東京スター銀行の場合、各行のATM設置戦略とはまったく関係なく設置されてしまうため、自行ATMのオペレーションに影響を与えてしまう。
この点に恐らく問題が発生する理由があったのであろう。

本来的には顧客にとって悪いサービスではないはずの東京スター銀行の無料ATMであるが、サービスの重要なステークホルダーである他の銀行との利害関係において、互恵的関係を築けていないことによって、今回の騒動が起きているものと思われる。
今回の騒動をみるにつけ、改めてセブン銀行のビジネスモデルの優秀さが浮き彫りになったと言える。顧客だけでなく、他行に対してもメリットのあるサービスを提供することによって着実に成長を遂げているのがセブン銀行だと言える。
ビジネスにおいては、関連するそれぞれのステークホルダーがメリットを生み出すような仕組みを作らなければ、サービスを継続していくことは難しいということを改めて認識させられる内容であった。

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